旅館は日本文化の中で育まれた日本独自の宿泊施設です。 もちろん現代においても日本文化と切り離して考えることは出来ません。 日本の衣食住の文化すべてが旅館にはあります。 もちろん日本文化と言っても近年注目を集めるサブカルチャーと呼ばれるような漫画、 アニメ、コンピューターゲームの文化ではありません。 日本人でも失いつつある伝統的な文化を指します。それらを留めているからこそ旅館の価値は高いのです。
まず着物。 日本の伝統的な衣服は着物です。 ほんの数十年前までは、皆さんが「サムライ映画(時代劇)」等で知っているとおりの着物を、 日本中の人間が着ていました。 しかし、今では一部の職業を除いて、ほとんどの日本人が日常的に着物を着ることはありません。 旅館では着物(その他和装)で仕事に従事する伝統が受け継がれています。 フロント係等スーツを着用している部署もありますが、客室係は着物や作務衣を着るのが一般的です。 また、あなた自身も旅館に滞在中は浴衣と呼ばれる簡易な着物を着ることが出来ます。
次に食事です。 現代の日本は世界でも有数の多様な食文化を持つ国となっています。 日本人は日常的に世界中の料理を口にしていますが、長い歴史を持つ伝統的な日本食には強い誇りを持っています。 伝統的な日本料理は調理に高度な技術を必要としますので、専門の飲食店で食するのが普通です。 特に京都には有名店がたくさんあり、全国的に高い評価を得ています。 京都で提供される日本料理は特に「京料理」と呼ばれ、その技術や繊細な盛り付けが特別視されることもあります。 旅館はホテルと違い、朝夕の食事を提供することが基本となっており、そこでは当然日本料理を提供しています。 伝統的な京料理から、もう少し一般的なお料理を提供する場合もありますが、 いずれにしても気軽に日本食を体験する場となり得ます。
そして旅館の建物もまた日本文化と密接な関係にあります。 元々日本の建築は木造ですが、近年では旅館も鉄筋コンクリート造りであることが一般的です。 長い歴史をもつ旅館は2階建て程度の木造であることが多く、建物全体が評価されることも多いです。 鉄筋コンクリートの旅館も内装はあくまで和風です。 その建築様式がどれくらい伝統的であるかは施設により様々ですが、少なくとも畳が敷いてあったり、床の間があったり、障子があったりということは多くの施設で共通しています。 これらのしつらえは日本の気候や風土、精神に由来し、様々な知恵から生み出されたものです。 従って、かつて日本の一般的な住宅には必ず取り入れられていたものですが、近年は生活の欧米化により急速に失われつつあります。 住まいにおける伝統を受け継いでゆくのも今後は旅館の役目の一つとなるのかもしれません。
他に旅館では「おもてなし」と呼ばれる、お客様をお迎えするにあたってのサービスについて高度な技術を有していると言われます。 特に京都のおもてなしには日本中のサービス業従事者が注目しています。 おもてなしは伝統的な日本人の考え方が反映された精神的な文化です。 これも旅館において伝えていかなければならない文化の一つです。
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