それでは、そんな京都の旅館で体験できることってどんなことでしょうか?
日本の代表的な衣服といえば着物です。
旅館では和装姿で従事しているスタッフがほとんどです。
スタッフだけではなく、お客様にも浴衣(簡易の着物)の提供がされています。
一昔前まで、着物は日本人の生活着であり、日本の原風景の一部でした。
欧米文化が戦前戦後より急速に日本に入り、生活スタイルが変化し多様化した現代では、
着物を生活着として着用している日本人はほとんどいません。
数少なくなりつつある日本の文化を留め、伝統を守り続けてきた京都でさえも、
欧米文化の影響は抑えることはできませんでした。
しかし、京都には伝統芸能と呼ばれる職種を筆頭に、
今も変わらず着物に身を包んでいる職業がいくつかあります。
その一つが旅館です。旅館には欧米文化を取り入れる以前の日本の姿が残されています。
和装姿で客人をもてなす主人や支配人、着物姿で料理を配膳する女将や仲居、
旅館ではそんな姿が当たり前のように存在し、客人自らも浴衣を着て旅館で過ごし衣服から体験し寛ぐことができる。
これが京都の旅館の魅力の一つです。
また、旅館の中で準備されている日本食です。
特に京都の和食は他府県の日本人が常に注目するほど、色彩豊かで、優しい味であるとして人々を魅了します。
そこには伝統で培われ育まれた、京都の食に対する職人の気概が込められています。
1,200年もの間首都として栄え、日本中の憧れであり、まさに贅を尽くしたものでした。
そして、京ブランドの食材は良質な水と土とそして人から生まれます。
おばんざい、精進料理、懐石料理、会席料理、その地で培われた伝統の技と味によって、四季折々の旬の豊かな美しさを、飽くること無く日々進化させ、時代のニーズに投げ掛けてきました。
守るべきもの取り入れるもの、食に対する京都の姿勢が旅館の食事にも現れています。
また美味しい地下水を持つ京都は日本酒の名産地でもあり、地産地消を体験するならば食事の際にともに味わうことは必須です。
そして、和の建築様式です。
四季を通じて変わりゆく物事に、移りゆく時間の流れの大切さを取り入れています。
例えば、年始に新調した青竹のしつらえ、青々とした竹が褪せ薄れていく色でさえ、旅館では一年の経過の侘び寂びを観賞する物事になります。
和室の隅々に目を配れば、そこには美しい日本の時間が流れます。
部屋に敷かれた畳の床は、い草の香りが心を癒し肌に伝わる感触が、心身ともに安らぎを与えるでしょう。
障子越し、光をやわらかく遮る障子紙の優しい光は、一日の始まりと終わりの時間を告げるでしょう。
床の間の歳時の花、そして飾り等のしつらえも然りです。
様々な物事の移りゆく変化に、美しさを見いだす空間が、和室の持つ日本文化の美なのです。
靴を脱いで畳の上で手足を伸ばし、ゆっくりと時間を感じリラックスする。
そんな和室を体験すれば、日本人の生活にきっと納得するでしょう。
旅館で体感できる最たるものは「おもてなし」という日本人のこころです。
日本人の生活スタイルに客人をもてなすという心があります。
京都の旅館では、着物を着た客室係が客人の滞在中の世話をします。
それは、荷物を運ぶことから、客室への案内はもちろん、食事の配膳、布団の上げ下げ、そしてルームサービスまで。
それら滞在中の身の回りの大半をこの客室係は行います。
しかし、実はこれらは「おもてなし」の一部でしかありません。
例えば、涼やかにお越しいただく為の玄関の打ち水、歳時を伝える客室のしつらえ、着物姿で迎える笑顔、やんわりとした京言葉。
京都の旅館の「おもてなし」、それは「そっと」手を添えることのできる小さな心配り。
そんな所作がもてなしの心の表れであり、日本人の温かみのある優しさが、京都の旅館の「おもてなし」です。
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